地球が壊れる前に、この四半世紀、アホを重ねてきた先進諸国の社会が小爆発を起こしたようで、このところ、経済面のニューズが花盛りである。この騒ぎは当然経済面にとどまらず、社会面の乱気流に拡がっていく。何をどうすればいいのか、対策を考えるためには、現状をできるだけ正しく眺める努力が必要であることはいうまでもない。
というわけで、時折、「たそがれの日本百景」と題したシリーズを続けることにする。
第1回目は、表題のとおりである。
私個人としては株式には興味がないので、滑ったの転んだの出来事はどうでもいいのだが、本日のトウキョウ株式市場は(日経平均)8千円を割り込んだと騒いでいるようなので、一言。
株式市場の落ち込みは、金融不安から、引き続いて、実経済(real economy)の先行き不安から投機屋が疑心暗鬼となり、製造業企業の株も投げ打っているところから起きているようだ。
これまでの主たる輸出先である欧米社会の購買力が落ちているから、輸出で稼ぐことが難しく、貿易収支の黒字も劇的に減っているのは事実だが、モノづくり企業はその中で真剣勝負をしており、外の世界の投機屋が、企業の業績の低下を見込んで投げ売りとか何とかの行為は傍迷惑な余計なお世話である。
特に、てめえらの銭コロガシの都合で株式市場を引っかき回しているのは外国マネーを操っている人たち(東京市場の6割)が中心だから、日本社会を支える経済、なんて視点はもちろん持たない。こんな人たちに会社の経営まで引っかき回されては、まことに迷惑せんばんな話である。
もちろん、このような引っ掻き回しをできるように金融(銭)を解放したのは日本の政官財であるから、投機屋を怒鳴るのは筋違いではある。さらにご丁寧に、あめりかさんに脅かされて、株価の時価会計制度まで導入してしまったから、企業としても、株が上がった下がったで一喜一憂せざるをえなくなってしまっている。投機屋はその一喜一憂をうまく利用してまたまたそれで儲けようとする。いや、儲かるようにシステムが仕立て上げられている。
真面目に地道にモノづくりに励んでいる企業にとって、こんなアホな騒ぎに巻き込まれるのは勘弁してくれ、と言いたいはずである。輸出がうまく行かなければ、次にどうするか命を掛けた戦いであり、株を下げられて、先行き真っ暗みたいなことを言われてはたまったものではない。
いずれにせよ、今回の、ウオール街に発する世界の大騒ぎによって、「自由市場経済」原理主義のイカサマが白昼の下にさらされたのだから、まともなシステムを再構築するいいチャンスであることは明らかである。
ついでに言えば、投機屋のもう一つの稼ぎ場(賭場)である通貨為替市場も、そのネタである「変動制」を見直すいい機会であろう。
ともかく、モノづくりでしか生きていけない日本社会にとって、この四半世紀の自由「銭」市場経済はまことに迷惑であった。
(08.10.24.篠原泰正)