”堤防が決壊して畑が流された。このまま放置しておくと経済が壊滅する。70兆円ぶち込んで損害の広がりを抑えねばならない。”なんて大騒ぎをこの1ヶ月ほど、アメリカを中心に欧州でも日本でも起こしてきたが、不況到来どころか、水平線の向こうでは、人類史上最大の大津波(Great Tsunami)が盛り上がりつつある。気象異変(climate change)という大津波が。
既にさまざま報じらているように、2007年に発表された国連のIPCCレポート(Intergovernmental Panel on Climate Change)の予測データは大幅に修正せざるを得ない事がわかっている。事態はマイルドなIPCC予測をはるかに超える速度で悪化しており、それへの対策は待ったなしの瀬戸際に来ている。時刻は既に夜の8時。真夜中まで残された時間は4時間。ドリフターズの長さんの掛け声に応じて、「全員集合」して事に当たらねばならない時間となっている。
昨日、10月20日から開催されたEU各国の環境大臣(Environment ministers)が集っての気象異変への取り組みの会議にあわせて、国連のWWF(World Wildlife Fund)が、先のIPCCレポートを追加修正する形で、最新のデータを編集し、「Climate change: faster, stronger, sooner」と題して欧州向けに発行した。これはEUがイニシャチブをとって、今すぐ対策を取ってくださいと要望しているものである。
その中には、ここのブログでも何度も記してきた様に、北極圏の海氷の溶け方は、既にこの地帯では最初の回帰不能点(tipping point)を越えたものと認めている記述もある。氷の無い海は太陽の熱をそのまま吸収するから、一たびこの地点を超えたら後はアレヨアレヨという間に氷が無くなっていく。地球の天辺(テッペン)で海洋の温度が上がれば、シベリアやアラスカ・カナダの大地の温度も上がり、さらには大洋の流れに大きな影響を与える。”氷がなくなったからさあ石油を採掘しよう”なんてのんきなことを言っている場合ではないのだ。
CO2の排出を減らすためには石炭・石油の燃焼を減らさなければ実現しない。その消費を劇的に減らしつつ、既に始まっている気象異変による厄災(例えばかんばつによる穀物収穫の大幅減など)に立ち向かっていかねばならない。景気後退だとか、いやすでに不況だとか、昔のままの時代遅れの経済理論を振り回している場合ではない。ステージはとくの昔にそんな結構な時代を通り越しているのだ。昔風に言うなら、不況対策にはこのエネルギーと環境対策がもっとも有効であるということだが、不況だろうがなんだろうが、やれることをやらないと人類が危ないのだ。
EUではなく日本がこの対策のイニシャチブを取れればいいのだが(その潜在の実力はある)、政官財学どこの顔ぶれを見ても、そのような望みは夢のまた夢ということがわかる。このことはしかし、ノルウエーやスエーデンといった一部の例外を除いて、欧州でも北米でも同じである。
(08.10.21.篠原泰正)