今週の暗い月曜日に引き続き、本日火曜日も日本の株式市場から暗い様相が始まり、明けたばかりの欧州株式市場も初っ端から銀行株を先頭に落ち込んでいるようだ。(現在日本時間18時半、欧州時間朝の10時半)
銀行の倒産と株式の下落という金融騒ぎは、現行のシステムでは、残念ながら経済全体に影響するようで、アメリカ経済のズッコケは欧州に飛び火し、その二つは周りの日本、ロシア、中国、インド、ブラジルにも広がり、その他アジア諸国やラテンアメリカにも拡がっていく。
相当規模のデカイ不況(recession)が始まっている。リセッションとは経済学の定義では、2期(半年)引き続いてのDGPの前年割れを言うらしいが、感覚としては、ものが売れなくなり、失業者が目に見えて増えていけばそれは明らかにリセッションである。
このリセッションは、できれば迎えたくないのが人情であるが、目を地球環境に向ければ、これは結構な話となる。これまでのようになんだかワッセワッセとやっていると、CO2を削減しましょうと言っても誰も本気ではなく、減らすどころか増える一方であった。”できもしないこと、やる気もない事をよくまあ口先だけ言うね”、ということだったが、不況となれば経済活動のまわり方は当然減速されるから、石油・石炭の消費量も減る。自動的にCO2排出は減ることになる。
地球の自然は多分既に元に戻らない地点(tipping point)を通り過ぎてしまっているから、今更、いささかCO2を減らしたところでどうなるものでもないが、破壊の速度を緩めることには効くだろう。そして、貴重な石油を次世代に少し残しておくこともできる。
日本の人口は世界の2%弱なのに、石油は毎日世界の消費量の6%、5ミリヨンバレル燃やしている。USAはもっとひどく、人口は世界の5%強なのに石油は世界の25%(20Mバレル)を消費している。メチャクチャである。ともかく、毎日80Mバレルという途方もない量の石油消費を抑えなければ地球の明日はない、ことははっきりしているわけだから、今回の金融騒ぎに引き続く不況は、その意味で歓迎すべきことである。自主的には減らせないのだから、不況で減らすしかないわけだ。
今回の不況(recession)が恐慌(depression)まで至るとは神様ではないから予測はできないが、アメリカ社会を眺めていると相当にヤバイ。80年前の大恐慌(Great Depression)の時には、各国の対策はまちまちであった。そこから何とか脱け出そうと戦争に走ったグループ(日独伊)もいた。ニューディール(New Deal)で何とか民主主義的に乗り切ったのが火元のアメリカであった。さらに、社会の中では、社会革命によってこの苦難を解決しようと図った大勢の人も居た。実際のところ、この革命運動を抑えるために、全体主義-戦争という解決策を採用した組とニューディールによる雇用創出を採用した組に分かれたという面もある。何もしないで放っておくと、世界中が、ソビエトロシアのように真っ赤になるという恐怖感が、戦争とニューディールを積極的におし進めたと言える。
さて、今回の大不況であるが、この回復はもはやこれまでのような景気回復策で何とかなるものではない。時代は既に新しい局面に入っており、昔の循環経済論なんてのは意味を成さなくなっている。その一番の理由は、消費できる石油が毎年減っていくからである。これまでの経済は、石油あってこその景気回復であったけれど、もうそのモルヒネは使えない。
熱いトタン屋根の上で鳴り物入りで踊りまくっていた人々(ウオール街はじめ金融村の人々)が静かになると同時に、経済そのものも、人間の生存に基盤を置いた「静かな」経済に変らざるをえないだろう。
(続きは明日以降に)
(08.10.07.篠原泰正)