こんな具合だから、技術部の担当をちょっと変えるのも人事に関する事は事業部長の承認を受ける必要がある。無能な上司ほど自分で権力を保持して権限を委譲したがらない。事態を改善するには自分の責任で黙ってやるしかない。隠密作戦だ。だが、隠密作戦も、うまくいったときにはそれを表面に出さなければ製品化はできない。そうするとそれが最後で、進捗が遅いといっては勝手に分かりもしない技術の中身に干渉してくる。
もっと悪いのは特許出願を自分たちで判断して自分たちでできないことだ。何かというと顔をアメリカに向け、アメリカの許可がないと何も決めないし、やらない。米国シスコム社の許可が得られないと自分たちの判断では特許出願しない。
シスコム社はアメリカの特許システムをベースに判断する。その上、これまで日本発の出願などほとんどない。許可にとんでもない時間がかかる。シスコムジャパンに入社してすぐに、面白い技術ができたので出願をしようとしたのだが、実際に特許出願ができたのは3年も経ってからだった。なんでもかんでも直ぐ出願する日本では考えられない。
その間に他社に類似の技術を出願された。ただ、その他社の出願をみるとその内容では、どうみても特許成立するはずがない意味不明のいい加減なものばかりだ。だから私はそのまま製品化することを主張した。だが、私の言うことを理解する力も、判断力もトップにはない。製品化は中止せざるを得なかった。他社のその製品は実用化され、大きな市場を獲得した。最近になって特許を調べてみると、思ったとおりその他社の特許出願は既に拒絶されている。(クリヤ・ビユ-)