昔、昔の話ではあるが、アメリカのスーパーマーケットで初めて買い物したとき、レジで「プラスティック要りますか?」と問われて、最初、その「プラスティック」が聞き取れなくて汗かいた覚えがある。日本じゃ「ビニール袋」というのにここじゃ「プラスティック」か、所変れば呼び方も変る、なんてぶつぶつ一人でつぶやいていた。
ビニールとプラスティックの違いが何かは、化学に弱い私にとっては謎のままであるが、頭の中にあるイメージしては、プラスティックは固形のものであり、ビニールはシート状となる。「プラスティックの袋」がピンとこなくて、「今何を言いました?」なんて聞き返して、レジのオネーチャンから軽蔑の目で見られる結果になったわけだ。いずれにせよ、化石燃料から取り出された化学製品であることには変りは無い。
そのプラスティック(plastic)が粉々にくだけて、まるでプラスティックのスープのようになって、カリフォルニア-ハワイ-日本を結ぶ広い海を形成していると、2月5日付けの英国のインデペンデント紙は伝えている。
その表現によると、これは世界最大のゴミタメ(the world's largest rubbish dump)であり、海面のわずか下を漂っているという。このゴミタメを発見したアメリカの海洋学者の言い方によると「Great Pacific Garbage Patch」(とてつもなくでかい太平洋のごみ斑点?)となる。彼の見積もりによるとその面積は米国本土のそれよりも広いのではないかという。この「Garbage Patch」は実際にはハワイを真ん中にして東パッチと西パッチに分かれているのだそうだ。
このゴミのおよそ五分の一(about one-fifth of the junk)は船や石油海上基地から捨てられたものと推定されている。つまり大半は陸地から流れ出したものとなる。そして、50年前に捨てられたプラスティックもまだ漂っているという。なんという耐久性!
このプラスティックのゴミ(plastic trash)は粉々に砕けており、半透明(translucent)で海面下を漂っているために、アメリカが世界に誇る(スパイ)衛星の写真にも映らないという。そしてこのプラスティック破片(plastic debris)は、毎年、それを飲み込んだ100万羽の海鳥を死に至らしめているという。さらに、海の哺乳類も10万頭が犠牲になっているという。
国連の環境プログラム(UN Environment Programme)の2006年の推定では、この海のゴミの90%はプラスティックであり、地球の海洋の1平方マイルあたり4万6千のかけらが漂っているという。
「プラスティック要りますか?Would you like to take a plastic?」
「要らない。 No, I don't need it, definitely.」
われわれはプラスティック文明から脱け出せる日を持つのだろうか。それとも、プラスティックで栄え、プラスティックと共に滅亡する運命なのだろうか。
(08.02.13.篠原泰正)