石油の呪い(The Curse of Oil)
世界は石油の呪いで覆われているようだ。考えてみると、この100年、近代工業化時代の後期の100年は石油の呪いの下に発展したきた。
さて、2007年も終ろうとしている。この年は、後世、ターニングポイントの年であったと記録されることになろう。
(1)石油を燃やしすぎた結果、地球温熱化(Global Warming)を招き、それは気象異変(Climate Change)をもたらした。そして、一たび狂い出した気象のバランスは、暴走し始めたようだ。今年の夏の北極海の氷の異常な溶け方は、多分、地球環境は既に回帰不能地点(Point of No Return, Tipping Point)を越えたことを示しているのだろう。もはやいくらCO2の排出を削減しても、元には戻れない地点を越してしまったのだ。「It is too late.」 石油の呪いが具体的に効いてきた。そして、5年以内に、夏の北極海豪華クルーズなんてのが、金持ちの間で大人気になっていることだろう。
(2)多分、今年はピーク・オイルの年として記録されるだろう。石油生産量が、日産84Mバレルの世界記録を達成し、この記録は人類史上もはや塗り替えられることはないだろう。生産量を楽観的に見ても、産油国での消費が増えているから、輸出に回される量は今年以上になることはもうありえない。石油の下での繁栄の時代は過去のものとなった。ドンチャカ騒ぎを繰り広げてきた工業化先進諸国の人々に、石油の呪いが降りかかり始めた。
(3)石油で得られた余剰金がこの20年世界を暴れまわってきたが、今年は多分、そのオイルマネーの頂点であったと記録されることになろう。米国で発生したサブプライムバルブの崩壊が頂点であったことを象徴している。まじめにこつこつと製造業に励んでいるだけでは、あのような膨大な遊び金は生み出せなかった。モノづくりの利益率は低い。地中から石油をくみ出すという単純作業の方がモノづくりの10倍20倍の利益を生み出す。そして、そのお金は人間を狂わせ、また極めて少数の人々に集中していく。石油の呪いの下に社会が荒れ果てていく。
何度も書いてきたが、私の歴史観察では、日本の近代は40年ごとのサイクルで昇ったり落ちたりを繰り返している、幕末から1905年の日露戦争までが昇り坂であり、その後の40年は坂道を下って1945年のどん底を見た。そこから這い上がって、1985年に頂点に達した。その後、日本は下りっぱなしであり、既に20年経過したけれど、急斜面は終りそうにない。このサイクル観察が正しければ、後20年も下りっぱなしということになる。憂鬱である。
その流れを断ち切るには、石油の呪いを吹き飛ばすしかない。すなわち石油の大量消費をやめて、地道にこつこつと生きる道を選ぶしかない。もっとも、日本だけが地道に静かに生きようとしても、海の外、西と東の大国の狂乱に巻き込まれる危険が大きい。もしそうなれば、石油の呪いからは、結局逃れることができなかった、ということになるだろう。
(07.12.20.篠原泰正)