今回の中国出張の目的は上海の渉外特許事務所の情報収集であった。中国の渉外特許事務所は、日本企業をクライアントにすることを強く望んでいる。日本企業をクライアントに持つのが渉外特許事務所の経営を安させる秘訣らしい。
欧米の企業は、中国渉外事務所の「良し悪し」を見極める能力があるという。英語が得意である中国弁理士はたくさんいる。だから中国弁理士や翻訳者の能力を評価して出願を特定の渉外特許事務所へ集中することがなくバランス良く依頼することが可能となっているようだ。其の分、渉外特許事務所にとって欧米企業からの要求(条件)、は品質、コストが厳しいから、欧米企業からの出願依頼は美味しくはないということになるらしい。
一方、日本企業は渉外特許事務所の「良し悪し」を見極める能力は絶無である。日本企業が渉外特許事務所の「良し悪し」を決めるポイントは、事務所の大きさ、豪華さ、スタッフの数、そして接待の「良し悪し」で決めるしかない。もう一つの選択基準は、たとえば「ソニー」が「トヨタ」が「松下」が依頼しているから大丈夫という、何も根拠がない責任転嫁の選択をしているわけだ。「天下のトヨタさんが使っている渉外特許事務所が駄目なら仕方ない」ということで言い逃れする積りであろうが、何かちょいと変だな・・・おまけに「ハチヤメチヤ」であっても一言も文句は言わない。こんな美味しいクライアントは日本国以外は有り得ないことである。このことを中国では「美好!謝謝」という。
てなことで、日本企業からの中国出願件数の9割が十数ヶ所の渉外特許事務所に集中しているわけだ。こんな異常現象にも無頓着でいられる日本企業の知的財産部には、ホトホトに呆れ果ててしまう。「没問題」?。
現在、中国は渉外特許事務所を増やしているが、日本企業と取引の出来ない渉外特許事務所は倒産していると聞いた。いずれ渉外特許事務所と国内特許事務所の壁は取り去られることになるらしい。しかし、特許事務所の経営の基盤となる日本からの「新種のODA」?である中国への特許出願が獲得できるか否かがカギを握るらしい。日本の病院経営と同じである。何処も悪くない病院好きの高齢者(固定客)を囲い込む事が経営を安定させるカギらしい。(矢間伸次)