タイトルだけから見ると、まことにノーテンキな楽天主義のかたまりのオッサンの言葉のようであるが、これから暑い夏の2ヶ月をこのタイトルの下で過ごそうかと考えている。
その概要。
1.背景
(1)気象異変によって地球が壊れていく。地球自然は、多分、もう回帰不能地点を越えており、今更何をしてももう元に戻らない。その中で、地球住民全員が、(歴史上)初めて全員が協力して厄災に立ち向かう「連帯」が生まれるだろう。
(2)石油が無くなっていくことで、世界はようやくまともな社会を構築できるようになるだろう。例えば石油が無くなれば軍隊は動かせないので、戦争は無くなる。石油が無ければ、大金持ちは存在しえないので、経済的「平等」が広まる。また、豊かさとは物質的なものではなく、精神的なものに求めるべきだと、多くの人が気がつくようになる。
ひと言で言えば、地球規模で、まともな人間社会を構築するラストチャンスを、今、迎えている。
2.日本人の役割
そのような地球環境の中で、日本人が果たすべき役割は極めて大きく、また果たせる能力を持っている。
その果たし方は、(日本人の特性を生かして)物静かに世界に生き方の模範を示すことにあるだろう。
なぜ、日本人が模範足りえるのか、その理由は以下のとおりである:
(1)哲学でもなく、宗教でもなく、倫理でもなく、日本人は「美学」をその行動規範に持っている。精神美においては「名こそ惜しけれ」であり、自分の行動(仕事)に責任を持つ。さらに、この美学は、「造形美」と「様式美」を持つ。例えば、様式美は社会的秩序にもつながる。
(2)「モノづくり」が大好きであり、これからの世界が必要とするさまざまな「モノ」を率先して作りだす意欲と能力があるし、蓄積が厚い。農業もまだあるし製造業もまだある。
(3)「ムラ」の概念は、よきところを伸ばせば、その中が平等なかたまりとして、地球規模での「ムラ」にまで展開可能である。
(4)伝統的な、自然と共に生きる「共生」の心はまだ失われていない。自然への優しさ、他者への優しさは日本人が誇るべき特性である。
(5)「和魂洋才」の下に、この150年、東洋の心と西洋の技術(システム)の融合を目指して葛藤してきた体験を持つ。
(6)「今」に生きる(ある意味でノーテンキな)民族であり、過ぎたことにこだわるよりも、今目前の課題に集中する特性がある。
(7)元々、あまり「銭」に執着しない民族であり、執着する人を嘲笑する健全な心をまだ失わずにいる。
(8)まだ儒教のおかげか、「礼節」の国であり、他者に対して万事控え目であるから、世界から受け入れられる基本姿勢が残っている。
(9)衰えてきたが、まだ健全なミドル(中流階層)層が分厚く存在している。
(10)物質的に豊かになったのは、長い歴史上、この40年ぐらいだけであり、ほどほどに生きていく知恵と感覚は、社会の体験として、まだ失っていない。例えば、石炭も石油もなしに3千万人以上が穏やかに暮らしてきた江戸時代は、まだついこの間、150年前の話である。
3.本当に日本人がリーダー的存在でありえるのか-その検証(1):西洋500年史
西洋世界は、世界と社会を上と下に区分する世界観(社会観)の下にこの500年経営されて来ており、そのものの見方と経営の方法(及びシステム)は、今や行き詰まっている。そのことは今の世界を眺めれば明らかである。
4.その検証(2):日本2千年史
日本の歴史は、公家衆の支配と武家衆の支配の交互で編成されてきており、武家衆の支配時には日本は世界に窓を開けた存在になりうることが示されている。
5.しかし、上に揚げたリーダー的存在になりうる理由は、ポテンシャルを示したもので、このままでは、物静かに世界に模範を示す存在となりえない。そこには、大きな改善努力が必要である。
(1)ポテンシャルを現実の力に顕在化するためには、上に揚げた要素の回復(復興)が必要となる。
(2)声高に叫ぶ必要は無いが(やれといわれてもできない)、模範を示すためには、「論理的」に考え、表現する力を、相当に基礎部分から養う努力が必要である。
6.リスク
これからの10年は、まともな世界を構築できるか否かのスリルに満ちたステージとなるが、このラストチャンスを生かせるかどうか、極めてリスクも大きい。
(1)下手すりゃ、石油資源の奪い合いが生じる
(2)世界の中と国内において、富の一極集中が加速される
これらは、支配層の(銭の元が消えていく)あせりと、せっかく獲得した物質的豊かさから没落していく中産階級のあせりによるヒステリー状態が生じると、世界的に起こる危険性がある。例えばナショナリズムが煽られるなどもその一つの表れとなろう。
冷静に見れば、まともな世界にいける可能性は3割ぐらいしか無いが、3割も可能性があるのだから、やるしかないだろう。
地球温暖化の暑熱に早くも頭をやられたか、と思われるかもしれないが、以上が、この夏にメモしておきたい概要である。
(07.07.16.篠原泰正)