11.何時でも入手できるたくさんの情報を、それがあたかも、コンセプトを生み出すために使える情報だと誤解し、情報を自身で構造化する努力をしていない人があまりにも多い。
12.コンピューター技術の進歩に目を奪われ、情報やその処理技術を、肝心の「課題を生み出す」ために活用する努力を怠ってきたように思う。それどころか、一つの情報それ自身が持つ価値にばかり注目し、価値ある情報を「見つけ出す」ことを、課題を「生み出す」ことと「錯覚」さえしていたのではなかろうか。
13.いま最もクリエイティブであるべき世代は、相変わらずの旧来のシステム・プロセスと制約の中で、情報の洪水と時間の不足のために、新しい方向を探り、自身の創造力・独創力を発揮するチャンスを与えられていない。
14.率先して手本と方向を示すべき彼らの先輩は、課題を生み出す活動の経験が不充分であるばかりでなく、新しい情報技術を、そのためにどう活用すべきかを知らないし、その重要性を理解しようともしない。同時に先輩の創造力は、年齢とともに低下してしまった。どんな優秀な技術者でも旬というものがある。
15.優秀だといわれる研究開発者は、自分に必要な情報は自ら収集して、いろんな方法で整理、蓄積をしてきた。文献カードの利用、紙の上の表を使う、表計算ソフトを使う、データベースソフトを使うなど、実態はさまざまである。
16.情報を解析し、価値ある情報を作り出す行為は、創造力を必要とする。そのノウハウは個人の持つ能力であり、他人には披露し難いものである。
17.日々刻々とアタマの中に溜まっていくたくさんの情報やアイデアをどのように処理すべきか?残念なことに、我々の記憶は衰えるだけでなく、日が変わることに鮮度も変わるという、いい加減な面もある。だからこそ日頃からアタマの中をきちんと整理して記録しておく必要がある。
18.企業にとっておいしいテーマとは、すでに完成されている技術の中から顕在化されていない潜在ニーズをあぶりだすことである。
19.役立つパテントマップを作成するには、感性と経験が必要と言われている。即ちパテントマップが、情報の創造的成果であると言われる所以である。ということでパソコンとマップ作成ソフトがあれば、誰でもマップが作れるという錯覚は今すぐ拭い去るべきである。
20.情報を解析するというプロセスは創造性に基づく思考過程 あるが、これをマニュアル化するのは極めて困難である。解析プロセスを「人」の側から分解すると、2つの大きな要素に分解できる。
一つは「作業」であり、もう一つは「思考」である。この2つの要素は解析プロセスの中で混在しているのが特徴である。「作業は誰がやってもほぼ同じ方法でできる動作でありマニュアル化が可能である。しかし「思考」はブラックボックス(脳の作用)であるため、人によって大きな差異があり、当然マニュアル化できない。
「思考」の本質は情報を解釈する中心要素である。ブラックボックスは文字通り目に見えないが、「思考」をスムーズに回転するための手段はあるはずである。つまり構造化、再構造化された情報を持つ、ということである。(矢間伸次)