英国の製造業は死に絶えてしまったか、と思っていたが、どっこい、スゴイ会社ががんばっていることを知った。名前は「BAE Systems」といい、欧州で最大の兵器製造会社である。売り上げは22ビリオンドル(12ビリオンポンド:邦貨換算2兆2千億円)、従業員8万8千人、世界で4番目の軍需会社という。本年度の利益は1ビリオンポンド(約2千億円)という「優良!!」会社である。
この会社は戦後あれやこれやの会社を買収、吸収してきたらしく、かの有名な、大英帝国を救ったといわれるスピットファイアー戦闘機(Spitfire fighter)やドイツへの夜間空襲で名をはせた4発のアブロランカスター爆撃機(Lancaster Bomber)も会社の歴史に名を連ねている。英国で初めて実用になったEnglish Electric社の双発ジェット爆撃機「Canberra」の名も挙げられている。世界初の実用垂直離着陸戦闘機(world's first vertical take-off aircraft)ハリアー(Harrier)を開発したのもこの会社の前身のひとつである。
このBEAの今もっともホットな戦闘機の一つが「F-35 Lightning II」で、「stealthy, supersonic, international multi-role fighter」であると同社は謳っている。つまり、レーダー波を吸収するステルス型で超音速で、多用途の戦闘機ということだ。これは米国海軍と海兵隊および英国空軍と海軍(Royal Air Force and Royal Navy)向けに開発された未来型戦闘爆撃機ということになる。*米国の「Marine Corps」は「海兵隊」と訳されているが名称のとおり「海兵軍団」とでも称すべきでかい組織で、とても「隊」などという小規模イメージの存在ではない。
もう一つが、ドイツとイタリアとスペインの4カ国で共同開発した戦闘航空機(combat aircraft)で名前は「タイフーン Typhoon」という。この名前の初代は第二次大戦の後期に主に地上攻撃で大活躍したホーカー(Hawker)・タイフーンである。これはネピア・セイバー(Napier Sabre)の3000馬力というとんでもないエンジンを積んでいた。(*日本は当時2000馬力の誉エンジンが最大であった)
この二代目タイフーンはこれまでに114機が共同開発国の4カ国の空軍に配備され、契約では全部で638機となるとのことだ。これからの20年、NATOの中核となるという。空対空(Air-to-Air)と空対地上(Air-to-Surface)の両方がOKという万能機らしい。
BAEは昨年暮れから、外国政府(Tanzania, Chile, Romaniaなどなど)に賄賂(bribery)を贈ったとかで議会を騒がせ、ブレア政権を揺るがしている会社でもある。
アメリカの製造業も元気なのは皆さん軍需関係で、ここではそれこそ世界最先端の技術が開発され製品に着々と組み込まれている。優秀な頭脳が軍需製品に使われているのを見ることは、まことに残念な話で、全面的に太陽光発電などのRenewable Energy や石炭のクリーン化やハイブリッドエンジンなどに向かってくれればありがたいが、それは望んでも無理なことなのだろう。
ともあれ、英米が優秀頭脳を軍需につぎ込んでいる間に、平和日本がこれから世界が必要とする技術に大々的に取り組んでいけば、ナンバーワンの地位を確保できるだろう。
軍用機はもういらない。
(07.02.23.篠原泰正)