40年前に、オゾン層を破壊する化学物質が大気中に積み上がっている(ozon-destroying chemicals were piling up in the atmosphere)と警告を発した英国の科学者ジェームス・ラブロック(James Lovelock)教授がワシントン・ポスト紙のインタビューで語っている話(9月2日付)は、まさに身の毛のよだつような恐怖の物語である。
オゾン層破壊に関しては、当時彼の警告を受けて各国政府が対応を図ったので、なんとかそれ以上悪くはならずに来ている。しかし、その他の彼の警告はほとんど無視され、あるいは私のように無知なまま、ドンチャン騒ぎを続けてきて、今日に至っている。
そして、彼の言うところによれば;
Our global furnace is out of control. By 2020, 2025, you will be able to sail a sailboat to the North Pole. The Amazon will become a desert, and the forest of Siberia will burn and release more methane and plagues will return.
地球の溶鉱炉は制御不能になってしまっている。2020年か25年までには北極点までヨット(帆船)で行けるようになるだろう。アマゾンは砂漠になりシベリアの森林は燃えてしまいもっと多くのメタンガスを放出し、疫病(ペスト)が再び襲ってくるだろう。
"It is too late to turn back."
「元に戻るにはもう遅すぎる.」
他の報道によれば、この1年でイタリアの面積ぐらいの森がシベリアで燃えてしまったというから、教授の言うことを笑っていられない。北極海の氷が溶けはじめ、グリーンランドの氷が溶け始めているわけだから、その溶けた面積だけ太陽熱を多く吸収するわけだから、溶け方が加速することは素人でも理解できる。暴走は始まっている。
ラブロック教授が最近出した本「The Revenge of Gaia: Earth's Climate Crisis and the Fate of Humanity」(ガイアの復讐:地球の気象危機と人類の運命)は読むのが怖いけれど、やはり読まざるをえない。「Gaia」とは教授が命名した地球の別名である.He came to see Earth as a self-regulating biosphere. 地球は自分で自分を制御している生物球体と、彼はみなすようになった。例えば炭酸ガスが増えだすと森林を広げて吸収するようにしたとか。その地球のセルフ・レギュレーションを俺達人類、特に「先進諸国」の人間が、たかだかこの50年の時間内で壊してしまったことになる。
私も含めてたいていの人は、嫌な事実を正面から見ることを怖がり、なるべく知らないようにする。そして、どうしても見ざるをえなくなって対策を考えるようになっても、結論はできるだけ後回しにして出さないようにする。そして、こうするしかないと分っても、それを実行に移すのは一日延ばしにする。このままの進路で進めば乗っているタイタニックが氷山にぶつかるとわかっていても、日常の事ごとに忙しく立ち働くことでまぎらわしてしまおうとする。あるいは、船上の賑やかなダンスパーティで美女を物色し、それもままならなければ酒をくらって酔っ払う道を選ぶ。
それが、私であり、あなたである。
しかし、われわれには子供がおり、すでに孫のいる仲間も多い。次世代、次々世代に大変なツケを渡すことになる。どうすればいいのか。アラスカが温暖な気候帯になるから、グリーンランドの氷がなくなりその名の通りグリーンになるから、今のうちから土地を買っておき、いつでも移住できるようにするか。そのような「ジコチュー」の方策しか取れないのだろうか。
ともかく、事実を知り、なんとか対策を考え、その対策を「文書」に記述する努力だけは続けなければならない。せめてもの償いのためにも。
(06.10.11.篠原泰正)