先日、ホンダのスーパーカブの累積生産台数が50M台を越えたという新聞記事を読んだ。東南アジアでの海賊版を加えれば、あと2-3割はこの台数にプラスされるのではないか。
もう50年近く昔のことと記憶するが、このモーターバイクが出てきたときは驚いた。エンジンの排気量の小ささに比べての大きな出力、そして音の静さと排気ガスがほとんど見えないほどの環境適応性。また、またがないで乗れるママチャリ(当時この言葉は無かったが)型のフレームデザイン。そして、ほとんどメンテナンスフリーの耐久信頼性。また、その価格。発想のユニークさとそれを実際に市場に出してきた勇気とエンジン、全てにおいて傑出したこの製品が大ヒットとなり、いまだに生産されていることはひとりホンダだけでなく日本の工業技術の金字塔であろう。
前世紀20世紀の製品の中から、世界のベストテンを選ぶとするなら、このスーパーカブは必ず選ばれるであろう。その他の候補としては、飛行機ではダグラスDC-3、ボーイング747ジャンボ、車はフォードT型、フォルクスワーゲンビートル、戦争の道具としてはカラシニコフAK-47アサルトライフル(assault rifle 突撃銃)などが上位を占めることとなろう.
スーパーカブ、DC-3、ワーゲンカブトムシ、カラシニコフに共通する要素は、一言で言えば「頑丈」である。使い方が乱暴であっても、手当てをしなくともびくともせずに動く。この頑丈さは「シンプル」な構造から得られている。そのシンプル性は、明快な製品コンセプトからもたらされている。これは、何のための道具なのかが、最初から単純明快に定められている。
このことから、ヒット商品を狙うなら、単純明快であること、が教訓として得られる。
これに習って、世の中、できるだけ単純明快に事を進めたいものだ。
(06.5.25.篠原泰正)