井上ひさし(故人)さん著作の、日本語教室(新潮新書)で、木下是雄先生(当時、学習院大学理学部教授)が書かれた『理科系の作文技術(中央公書)』について“素晴らしい御本だ”と述べている、ことをIPMAのホームページで紹介したことがる。この『理科系の作文技術(中央公書:初版1981年9月25日』が、2020年2月25日に出版(87版)されていた。新型コロナウイルスで自宅待機をしているので読む時間は十分にある。さっそく購入して読んでいる。日本語とは一体どんな言語なのか、興味のある人はぜひ手にしたい御本である。
自分は、世界へ「物・事・考え」を伝えるための「やさしい日本語」を学ぶことをライフワークにしている。それは、知財業界にも必要な「平明日本語運動」にも繋がると思っているからだ。しかし自分には人様を説得できるだけの学識と経験がない。それに比べ、木下是雄先生は、実際に指導してきた経験を基にして述べられているので“いちいちご尤も”説得力がある。例えば、このように簡潔で分かりやすく説明されている。
1.文章には2通りある。ひとつは自分だけが読むもの→どんな書き方でもよい。もう一つは他人に読んでもらうもの→間違いなく相手に通じるように表現しなければならない。
2.必要なことは漏れなく記述し、必要でないことは一つも書かない。
3.明快・簡潔な文章の要件は、論理の流れがはっきりしており、一つの文と文との結びつき方が明瞭なこと。
・一義的に読めるか、他の意味にとられる心配はないか、
・はっきり言えることはズバリと言い切る、ぼかした表現はをさけ、
・できるだけ普通の用語、日常用語を使い、なるべく短い文で文章を構成する。
つまり理科系の作文技術には
1.「ひとの心を打つ」「琴線にふれる」「心を高揚させる」「うっとりさせる」というような性格が一切無視されていることである。
2.「やわらかさ」を考慮するために「曖昧さ」が導入されることを嫌う。
3.主張が先にあって、それを裏付けする材料を探すなどということはあり得ない。
4.書く作業は主要構成材料が手元にそろってから始めるのである。など視点を変えての説明は新鮮である。(発明くん 2020/06/25)
(*)ホームページで井上ひさしさんの日本語教室のことを紹介しています。
https://www.ipma-japan.org/chizai-yasashiinihongo.html