「転換・革命期」の時代背景(5)
「IPランドスケープ」には、明確な定義が確立されているとは思えない。それは極めて抽象的で曖昧な存在である。物事は、抽象的であれば、そのテーマの共通事項を取り出し「抽象密度」を高めながら具体化して行く作業が必要となる。「IPランドスケープ」を取り入れた会社経営を目指すなら「IPランドスケープ」とは何か、を解決しなければならない。それには、まず「経営開発情報」とは何か、を明らかにすることで本質が見えてくる。
いま、私の(発明くん)手許に、2件の新聞情報がある。なぜ発明くんが、この記事に関心を寄せているのか。その理由は、第4次産業革命で多くの企業が衰退し、これからの日本はどのように変わって行くのか、という不安である。
例えば、「株式会社 発明くん製作所」という会社があると仮定する。社長の名は、とりあえず発明くんとする。会社の取引先は、自動車メーカ、建設機械メーカの下請けの、下請けをしている町工場である。納品している製品は、化石燃料エンジンの動力装置の部品である。社長、及び社員たちは、会社を愛している。長年、積み上げてきた「物づくり技術」の蓄積にも自信を持っている。
社長の悩みは、化石燃料エンジンが電動化されたら自社の部品は不要になるのか、電動化に対応(代替)できる部品が自社で作れるのか、といった恐れである。好む、好まないに拘らずIoT関連と電動化に関する情報には敏感に成らざるを得ない。
1)日本経済新聞(2019/06/17)「ものづくりデータ取引 開発・生産を効率化」三菱電機、安川電機など国内の主要メーカ100社が連携し、設備の稼動状況や品質検査などの製造の製造データを相互に取引できる仕組みを作る。生産や加工の情報を取引先と共有することで、開発期間の短縮やものづくりの効率性の改善などにつなげる。品質や生産工場の鍵を握る製造データは競争力の源泉で、多くの企業が自社の中に閉じ込めてきた。(記事そのまま引用)
2)日本経済新聞(2019/08/01)「コマツ、IoT網で主導権 データ強者の地位固め」コマツがデジタル時代に「データ強者」の地位を固めるため第3の矢を放つ。建機の遠隔監視システム「コムトラック」を世界に先駆けて発売して20年。2017年にデータ活用の情報基盤「ランドログ」を立ち上げたのに続き、他社製も含め建機をデジタル化できる後付け機器を20年に本格投入する。集まるデータ量を飛躍的に高め、建設業界におけるデータ経済圏で主導権を握る。見据えるのは米キャタピラーや中国勢とのグローバル競争だ。(記事そのまま引用)
2019/06/17の新聞記事からは、あらゆる物がネットに繋がること、IoT技術やAIの進歩により、製造業でもデータ活用が競争力を左右することが分かる。これまで製造現場で生じるデータやノウハウは競争力の源泉であり、他社と共有することは考えられなかった。
2019/08/01の新聞記事からは、土木建設及び鉱山会社の経営最適化、即ち御客現場のIoTに力点を置いていることが分かる。更に建機やダンプトラックの電動化、自動運転の方向も見えてくる。
社長である、発明くんが、これ等の情報を基に「業界における自社の位置、自社が必要とする、あるいは持たない技術を知りたい」と言う筋書きで話を進める。(発明くん 2019/10/23)