「転換・革命期」の時代背景(2)
例えば自動車産業は「IT技術」の進化で自動運転技術の研究開発が可能となった。更に環境汚染問題(気候の変動)も解決する必要に迫られており、電気自動車へシフトされている。駆動エンジンの電動化は避けられない。欧州の自動車メーカは、ガソリンエンジンの開発を止めると既に宣言していると聞く。では、ガソリンエンジンで食っている関連会社の未来はどうなるのか。究極のエンジンを求めたカーレースに使われるエンジン、あるいは高額でも買えるマニアはいるかも知れないが、市場は小さすぎる。今の状態で、自社の事業が永続できる保証はない。
企業の合併、統合、買収、廃業、倒産に起因するリストラは避けられない。「一日でも長く、緩やかな変化を望み、自分が逃げ切れるまで、なんとか会社が持ち堪えてくれれば」と、祈っても、それは運に任せるしかない。この流れは自動車産業に限らず金融産業を初め多くの産業へ及んでいる。
第2次産業革命は、多くの労働力を必要とした。人類にとって「害(紛争)」もあったが大きな「利(技術の進歩と産業の発展)」を齎した。第4次産業革命は、人工頭脳(AI)が人間の仕事を奪うとも言われている。勝ち組、負け組みの格差社会ができる。人の心は疲れ、想定できない様々な社会問題が発生する。自分が、あるいは会社が新しい価値観を見出し「らしく」生き抜くには何をすべきかを考える節目にあると思う。
日本はなぜ、「インターネットによる物つくり」に遅れを取ったのか。大きな理由は、「黎明・成長期」における成功体験に固執し、グローバル世界の本質を理解していなかったからだと思う。日本製品を輸出する、海外で日本製品を作らせることがグローバル化と思い込んでいたのではなかろうか。グローバル化の本質は、世界がネットで繋がったこと、巨大なデータがビジネスになること、異文化を受け入れること、意欲と才があれば誰もが起業できること、そして、世界へ「物・事・考え」を伝えるための日本語を、もう一つ持つことである。即ち、それは「文明言語」を基にした「文明日本語」のことである。
いま直ぐに会社がやるべきことは、自社事業に関するあらゆる情報を世界中から集め、まず現状を把握することである。次は課題を見つけ、その対策を立て、行動を起こすことである。そのための「事前調査」が重要となる。しかし会社には、それが出来る人材が圧倒的に不足している。否、育成してこなかったとも言える。
だからと言って 闇雲に情報を収集し、俄かに分析した場当たり的な調査レポートは使えない。まずは、何のために調査をするのかの目的をしっかりと定めることである。それには、何故そのような目的を設定したのか、発想の源流を明らかにする。次に関連する情報を収集し俯瞰して見る。そして思考錯誤の中で、その成果と波及効果を予想する。何事も準備することが大事である。
余談であるが、多くの人がアイデアやコンセプトは、準備や努力もなく、生み出されるものと誤解している。無形のものは無償で生み出せるものだと思っている。筋の良いコンセプトを創り出すには、当人の意欲はもちろん、それだけの時間と努力、そして創造力が必要である。何も投資をせず、その環境すらも与えず、筋の良いコンセプトが生まれるなどという、そんな美味しい話がある訳がない。(発明くん 2019/10/11)