「成熟・衰退期」の時代背景(2)
特許情報は研究開発活動の成果であり、企業の研究開発の具体的な断面を表している。言いかえれば、各企業の活動を最も正確に把握できるのが特許情報である。しかし、一つ一つの特許を点として見ただけでは、企業の開発戦略は見えない。特許出願の時間的流れと技術的な傾向を読み取り、特許以外の情報と組み合わせて、初めて技術開発戦略や、企業の動き等が見えてくる。特許解析は、企業という動く身体をCTスキャンで輪切りにし、表に出ない部分を探る手段である。
しかし、どのような情報でも,それを整理加工しなければ役に立たない。例えば、身近な新聞記事の情報をスポットでなく時系列に並べて整理すると、そこに新しい情報が見えてくる。このようにして情報を一つの「群・流れ」として眺めることが重要である。特許情報においても同じことが言える。これがパテントマップの基本的な考え方だと理解している。
パテントマップとは、特許情報の技術分類、出願人、キーワード等を単純に整理加工した美しい?絵図を作る事が目的ではない。この種のパテントマップ(*)は、データ情報を数値情報に置き換える方式が多く、簡単に作成することができる。お金と人手をかけて苦労したわりには利用価値が小さい。
(*)特許を数値で表現するのが「統計処理型パテントマップ」と位置つける。
このレポートから動向や流れを知ることは出来る。しかし具体的な行動を起こすには何かが足らない。せっかくの労作も?作成者の自己満足か、仕事をしているというアリバイつくりで終わることに成りかねない。確かに、ちょっとした情報加工だけで、ヒントやアイデアを出せる人はいる。しかし、その数は極めて少ない。
例えば上司が、単にパテントマップを作って自分にみせろと指示しているとすれば、その上司は創造力が生まれるプロセスがわかっていない、ということになる。この種のパテントマップは、上層部からの「命題型」、あるいは「忖度型」ともいわれている。
パソコンと、マップ作成ソフトがあれば、誰でもマップが作れるという錯覚は今すぐ拭い去るべきである。パソコンとマップ作成ソフトはあくまでもマップ作成(図表作成)のツールでしか過ぎない。パテントマップさえ作れば、情報感性と創造性が発揮できるというのは幻想であり魔法の杖ではない!
パテントマップ作成の狙いは、その作成過程(収集・解析・整理・加工)で、重要なヒントを得、アイデアが浮かぶことを期待するものである。実際の研究開発に役立つのは、マッピング作業を進める過程から、生まれる新しい発見と創造である。これを「調査研究」と言う。「衰退・成熟期」で必要なのは研究開発技術者たちの創造力を共有できるR&D部門の「知的基盤(プラットフオーム)」の構築である。(発明くん 2019/09/13)