「成熟・衰退期」の時代背景(1)
「成熟・衰退期」は、日本企業のR&D力が弱まっている時代である。それは新しいコンセプト(市場・製品・サービス・技術)を創出するパワーが不足していたからである。消費者の不満を見つけ、それを解決する商品を出せば売れるという時代ではない。日本企業は、かつてない試練の時期にあるということは当時、誰もが認識していた。この状況を突破するためには自社事業から派生する新規事業を「探索・発掘」するしかない。「研究テーマの枯渇」も深刻であるが「魅力ある研究テーマがない」「筋の悪い研究テーマばかり集まる」など、業種を問わず研究開発部門の悩みとなっていた。
「成熟・衰退期」は、発想あるいは視点の転換期でもあった。例えば、市場の常識、業界の常識、自社の常識、研究開発の常識等を疑い、時代の変化を先取りする気鋭が求められた。会社は、社会の変化に対応して変わらなければならない。会社が変わるには、組織も変わり、そこで働く人(社員)も変わらねばならない。しかし中々変われないのが人の意識である。経営陣の事業戦略、ビジョンの欠如、研究開発技術者のサラリーマン化なども大きな理由として挙げられる。しかし、お互いが責任を擦り合っても、会社の業績は上がらない。詰まるところ、会社、組織、社員の意識を変えるには市場である。
こうした状況の中で「特許情報の活用」が注目された。これが「パテントマップ」である。その目的は、「自社事業の技術と企業動向を知り事業戦略を立案」し、「新規事業&新技術を探索」することである。それは「知財の安全確認と自社事業の優位性確保」である。特許情報を解析することで、自社の事業戦略と、それに付随する知財戦略に必要な作戦地図(マップ)が描けると考えた。しかし、パテントマップさえ作れば美味しい「ネタ」が発掘できるというのは幻想であった。
(*)前号で紹介した「特許年間索引」について:特許資料センターは「特許年間索引」に続いて「特許索引速報版(2回/月)」を発行した。後年この事業は日本アイアール社ヘ引き継がれた。平成5年以降はCD-ROMで出版された。(発明くん2019/09/10)