「IPランドスケープ」について自分なりに整理してみる
先に開催された特許情報フエアー(11/7-9)で関心ごとは、「AI」と「IPランドスケープ」であった。だが、具体的な姿が未だ見えないというのが正直な自分の感想である。膨大な特許情報は使う人の目的に応じて選別し、使い勝手を良くしなければ単なるゴミ情報となる。今月は、IPランドスケープについて自分なりの考えを整理してみる。
特許情報の使い方は、大きく分けて「経営開発情報」、「技術開発情報」、「知財開発情報」が考えられる。
「経営開発情報」とは、経営陣、事業推進(カンパニー)責任者、研究開発責任者向けのレポートである。それは、自社事業のマーケテイング調査として、市場、企業、技術、知財動向等の調査したレポートである。その目的は、自社事業の優位性を確保すること、つまり自社の事業の戦略を立案、策定できる内容が要求される。「経営開発情報」で特許情報を使う理由は、レポートに対する信憑性の担保(裏)を取ることである。ただ、注意することは、特許情報を前面に出し過ぎないことである。いきなり特許情報の押し付けると、読み手側に敬遠される因となる。読みやすく、分かりやすく噛み砕いて、さりげなく入れ込んでおくことが秘訣である。そのレポートをキッカケに、つぎは「こんな情報、あんな情報、」が欲しいと、部門責任者から指示が出るようになる。知財部門への期待は、知財マンのモチベーションを高め、働き方も変わる。
「技術開発情報」とは、経営開発情報をアレコレと引きます回すことで、進化を遂げていく情報である。それは、知財の安全を確認し、自社が安心して自由に研究開発が出来る技術領域、あるいは自社が踏み込んで「ヤバイ」危険な技術領域を早く見つけることである。その目的は、R&D部門の知的基盤(インフラ)の構築に繋がる。この基盤が、自社独自で構築される「AI」ではなかろうか。
「知財開発情報」とは、知財の創出、知財の権利化、知財の保護と活用、そして知財係争に備えての対応準備等に使う情報である。R&D部門から生まれる新しい発明技術は、夫々性格があり目的と役割を持つ。それに沿った知財出願戦略を立案、策定するに役立たせる情報である。
いずれにせよ、これらの情報は、使う人の要求に合ってなければ徒労に終わる。「AI」は、用意されたボタンを押せば働いてくれるわけではない。それらのボタンを最適に組み合わて「AI」を働かせるのは人間でしか出来ない。膨大な特許情報の中から、関心情報を取り出し、観点毎に集合すると言った処理は「AI」の支援が受けられる。しかし、具体的な戦略を立案、策定するには応用力(抽象度を高める)を必要とする判断作業が中心となる。これは人間が行なうべき創造的(感性、経験知)な仕事であり、自社の社員しか成せない。なぜなら、戦略は、その会社の規模、事業業態、市場、取引先に拠って違い、汎用的な戦略はありえない。自社独自のものであるからだ。(2018/11/30 発明くん)