ー考えることで、働き方は変われるー
特許情報は、①知財関係者が使う「知財開発情報(権利、侵害、活用など)」、②研究・開発・設計技術者が使う「技術開発情報(課題の探索と解決法など」、③経営上層部や事業責任者が使う「経営開発情報(企業・技術・知財動向など」と、使い方は多種多様である。これ等の情報は使う人の要求(ニーズ)に合っていなければ、単なるゴミ情報となる。収集した情報は、使う人の目的に合わせて分かりやすく、見やすく加工・編集を工夫することで、情報に色が付き匂いを発する。そして生きた情報として血が通う。
幸いなことに特許公報の電子化で、特許情報の入手(検索、調査)と編集が格段とやりやすくなった。それは特許情報の利用範囲が大きく広がり、新たな情報価値が生まれることを意味する。これまでのような限定的(主に特許調査)な利用方法だけでは、実に勿体ない。様々な立場で仕事をしている人たちが、夫々の視点(角度)から加工された特許情報を見ることで、新しいアイデアやコンセプトが生まれ、経営戦略や事業戦略、そして知財戦略等の立案・策定に使える情報になり得る。中でも「経営開発情報」は特許情報だけでなく、あらゆる情報を加味して競合他社の経営情報や技術開発動向を的確に捉え「経営戦略」で使えることが大事である。まさに『情報を制する者(企業)が戦いに勝つ(孫子の兵法)』である。
会社経営における知財戦略の実効性は「知財ありき」でなく、自社の事業戦略と乖離しない「ビジネスありき」が大前提である。知財戦略の柱は、①戦略的に知財調査をする、②戦略的に知財出願をする、③戦略的に知財契約をする、④戦略的に知財運営(マネジメント)をする、等が考えられる。ところが、戦略という言葉は極めて抽象的であるにもかかわらず安易に使われている。しかし具体化することは難しい。抽象的な事項を具体化するには、抽象概念の中から、①共通事項を取り出し【基本を知る】、②抽象度を高めていく作業、即ち自分の頭で考え続けることで【応用で解く】、③具体策が浮かび上がる【戦略に繋ぐ】。①の【基本】には法的な根拠などがあり、②の【応用】には分析力と思考力が求められる。つまり、③の【戦略】とは、用意された答えが無く、自分達で考え、進むべき道筋を見つけることである。
先月のブログで「戦略的特許調査」について能書を述べたが、その続き。『現場の技術者が権利の侵害に対して安心して開発設計ができる環境を整えるのが上層部(上司)の仕事である』という企業文化が、まず必要である。次に技術者たちのアタマの中にある「モヤモヤ」とした情報を聞き出し、整理(アウトプット)と確認の積み重ね、開発プロジェクトの進むべき航海図を作る。この航海図に沿って特許調査を進めることで、特許侵害係争も激減し、自社の強い特許も作れるようになる。トータルでの知財コストは激減すること間違いない。更にプロジェクトメンバーは、創造的な仕事を楽しめ、元気になれる。この航海図をメンバーが共有することで、技術の伝承だけでなく、その航海図は進化をし続ける。この航海図をR&D部門の「知的基盤(インフラ)」と位置づけることで技術者たちの働き方が劇的に変わる筈だ。因みに、この「知的基盤」の構築には「ベテランOB技術者」の支援を受けるのが手っ取り早い。『何事をするにも準備が大事である(孫子の兵法)』。次回はR&D部門の知的基盤を作ることで技術者たちの意識と働き方が変わる。(発明くん 2018/08/17)