フロリダに本社を置く小さな会社、ソロモン・テクノロジー(Solomon Technologies, Inc.)が、昨年(05年)9月12日にトヨタを、自分たちのもつ特許を、トヨタのハイブリッドエンジンは侵害していると、フロリダの中部地域連邦裁判所に訴え出た。
claiming
infringement of a number of claims
in Slomon's USP 5,067,932,
primarily relating to Toyota's use
of technology in its Prius
and Highlander Hybrid vehicles.
-- by press release of Slomon- -
ついで、ソロモン社はトヨタとの裁判にそなえて、訴訟費用を立て替えてくれる会社を見つけ出している。Solomon arranges Patent Litigation Financing, -同社の05年11月29日の新聞発表より-
更に、本年(06年)1月11日には、上記の裁判所への訴訟だけでなく、今度は、米国政府の機関であるITC(US International Trade Commission)に苦情申し立てを提出した。(Solomon Files ITC Complaint Against Toyota)。この行政機関の機能のひとつに、米国に輸入された製品が米国特許を侵害しているかどうかを調査し、判定することがある。さらに輸入差止めを命令する権限ももっている。
上記の申し立てを受けて、ITCは早くも先週末、2月8日に、調査を開始すると発表した。
ITC institutes section 337 investigation on certain combination motor and transmission systems and devices used therein, and products containing same-新聞発表のタイトル-
The U.S. International Trade Commission
has voted
to institute an investigation
of certain combination motor
and transmission systems
and devices used therein,
and products containing same.
トヨタのハイブリッド車が侵害しているとされる上記のパテントは、1991年に、J.Edwards氏個人に授与されているもので、ソロモン社の設立が1995年であるから、同社はこのパテントを発明者から購入したのか、あるいはこの発明者が同社に参加したのか、そのあたりの事情はわからない。
ソロモン社は小型船舶用モーターなどを設計製造している小さな会社であるが、今回の動きは、所有するパテントを使って、大トヨタから金を巻きあげようとするものである。調べた限りでは、同社がもつこの技術関連のパテントは、上記の一つだけである。ハイブリッド車が市場で確立されるのをみて、満を持して一発勝負に出たのだろう。
ITCは、外国製品、特に日本製品をいじめるのが大好きな機関だから、ソロモンからの申し立ては、待ってましたと歓迎しているのもみえみえである。
このパテント「Dual-Input infinite- speed integral motor and transmission device」のクレームと、トヨタのハイブリッドシステムの関わり具合が、これから裁判所とITCの両方で調べられるわけだが、普通にながめれば、状況はトヨタに極めて不利である。ITCがハイブリッド車の輸入差止めをちらつかせ、裁判では陪審員が大金持ちのトヨタに同情するはずもないから、トヨタとしては早期に和解金で手を打つことにするのではないか。訴訟側も当然和解金ねらいだから適当なところで手を打つだろう。
ハイブリッド技術関連で、おもいもかけない場所に「地雷パテント」が潜んでいたことになる。
(06.2.13. 篠原泰正)