”多くの日本人の方と仕事をしてみると優しい人ばかりで、日本が好きになり日本語を勉強してガイドになりました。息子も日本が好きで、日本の大学を卒業し、いま京都大学の大学院で勉強しています”と。重い気持ちが少し軽くになりました。
瀋陽市内の観光は、瀋陽故宮(清の太祖ヌルハチと太宗ホンタイジが北京に遷都するまでの皇居)、張氏師府(張作霖、張学良親子の官邸兼私邸)、旧奉天駅(辰野式建築で東京駅に似ている)、旧大和ホテル(旧満州国を代表する迎賓ホテル)、旧横浜正金銀行奉天支店、旧満鉄鉄道総局、旧奉天日本郵便局等、日本に所縁の深い建物の見物をしました。
因みに浅田次郎の中原の虹(全4巻)の主舞台は瀋陽で、主人公は東北軍閥の親分である張作霖です。読み出したら止まらない面白さで、夜更かしたのを覚えています。一族の活躍が実に痛快で、いまだに憧れです。張氏師府の見学は妙な懐かしさに浸り感激しました。北陵公園(太宗ホンタイジンとその皇后の陵墓)、東陵(太祖ヌルハチとその皇后の陵墓)は、時間がなく訪問できませんでした。
瀋陽で有名な食べ物は、やはり「蒸し餃子」です。中でも「老辺餃子(1829年創業)」は有名で、東京新宿にも沢山あるそうです。我々は「李連貴の燻肉大餅(1842年創業)」をご馳走になりました。豚肉の燻製と取立ての新鮮ネギと甘辛の味噌を、東北地方特有のクレープに包んで食べます。北京ダッグとは美味しさが違い、美味しさの表現が上手くできずにすいません!。(次回は大連です)
さて本題に入ります。では、翻訳現場はどうなっているのでしようか。英語への翻訳が難しいのは、日本語を読解する「日→日翻訳」の作業です。翻訳者のエネルギーの多くが、この「日→日翻訳」に宛てられているのが現状です。日本語を母語としている日本人翻訳者が、その日本語の「読解」に苦労している訳です。”分かりやすい伝わる英語へ翻訳できる「スーパー翻訳者」を求む”といっても、それは無理な相談です。たとえ居たとしても勝手に解釈して翻訳することはタブーです。翻訳者は、余計なことはせずに与えられた日本語の文面に合わせて「忠実翻訳」するのが鉄則です。
我々日本人は、世界の人々に「物・事・考え」を伝えるためには、好むと好まざるに関わらず、それらを明快に記述する言語を用意し、分かりやすく伝える責任が果たせる、もう一つの日本語を持つ必要があります。それは、日本人と文化を異にする世界の人々に語りかける、つまり橋渡しをするための「平明日本語」、即ち「文明日本語」です。それは日本文化に根ざした「美しい情感ある日本語」でなく「伝わる・訳せる日本語」のことです。
では、どのようにして「伝わる・訳せる日本語」を書けばいいのでしょうか。実は極めて簡単なことです。英語で記述されている「物・事・考え」と同じ内容を日本語文章で書けるように訓練をし、慣れれば済むことです。世界の普遍事項を論理的に明快に書き表すことにおいては、英語が格段に適しており整備されていますから、とにかく真似するのが手っ取り早いです。ご承知のように英語文章は極めて構造的になっていますから、英語と互換性が取れる日本語で書けば翻訳ソフトの支援が受けられ楽になります。この利点を大いに利用すべきです。
いま外国特許出願で抱えている問題は、多義的で曖昧な「日本特許出願明細書」から「忠実翻訳」された日本特有の英語、つまり「和製英語(ジャパンニシュ)」が、英文特許出願明細書の文中に含まれていることです。“分かりやすい伝わる英語へ翻訳するのが翻訳者の仕事だろう”と翻訳者へ責任を押し付けられても、それは困ります。まずは源流から改善(難しいことではありません)することが急がれます。
余談ですが、南スーダンの現状を記した日報に対する政府の見解が凄かったです。「戦闘」は憲法違反となり自衛隊の派遣(PKO活動)ができなくなるので「武力衝突」に修正したとのことです。日本語の凄さを改めて認識しました。(2017/7/28 発明くん)
参考資料):アメリカ大学(ウイスコンシン大学/スタンフォード大学 Knuth教授)における文章作成指導
http://www.ipma-japan.org/pdf/20161129-01.pdf