紙(文書)だけで金を稼ぐ米国特許明細書の凄まじき実態
「米国特許5438611号」の対訳教材を作成した目的は、
1).大金を稼ぐ特許明細書は、どのように記述されているのかを知ること、
2).内容の把握と同時に、英文構造への理解を深め、米国特許文の読解を支援すること、
3).「物・事・考え」を論理的且つ明快に日本語で記述することを学ぶためです。
この「611特許」は全36頁で、請求項は80項あります。因みに「611特許」の一連で「USP6317592号」があります。基本内容は変わりませんが、請求項だけで665項あります。欧米人が特許明細書を作るエネルギーに驚きです。「IoT技術」や「AI技術」の特許となれば、一体どんな特許明細書になるのか、考えただけでも頭が痛くなります。
あらゆる分野の情報を感知し、ネットワーク化し、それらの情報を人工知能で解析し、最適化し、御客が得た利益から対価を得るというビジネスモデル(産業構造?)ですから詳細に渡って総てを文章化し、開示することは難しいです。情報(ビッグデータ)が頂点にあり、解析、診断、予見、通信などに使われる技術要素は極めて複雑で多岐に及びます。またデータやソフトプログラムといった知的財産を特許だけで保護することは限界があります。特許の価値(地位)は明らかに低下していきます。今後は特許、実用新案、守秘技術(営業秘密、ノウハウ等)、商標、意匠、そして特に著作権を重視した総合的な「知財マネジメント」が必要となリます。まさに「特許」から「知的財産」への変革です。ところが日本人は基本的な部分の変革が苦手です。
「地球温暖化パリ協定」に関する記事(11月4日朝日新聞)が面白いです。日本は、なぜ加盟に遅れたのかという内容です。日本が主導した京都協定は、日本が開発した環境技術を使って温暖化を防ぐという考えです。パリ協定は、二酸化炭素が出ない社会にすれば良いという考えです。
例えば温暖化でワイン用のブドウが育て難いとなれば、解決策として温暖化に強いブドウをつくるのが日本人です。日本人は与えられた環境の中で課題を解決するのが得意で、その努力は惜しみません。良質のブドウを守るには二酸化炭素を出さない社会にすれば良い、という抜本的な解決による大変化であれば戸惑います。知的財産の世界はグローバル化と第4次産業革命の下にあります。抜本的な変革は避けられません。「知財革命」についていけず世界から取り残されることが心配です。(発明くん2016/11/18)