会社から消えていく記憶力、考えることも無くなるのか
本年11月「2015年特許・情報フエア&コンフアレンス」が開催された。この数年は外国人の来場が増える傾向が見られる。しか展示ブースは例年と変わらず「マンネリ化」しており、目新しい展示はなかったと思う。
知財部門は、この10数年の間に様々なシステムの導入を進めており、社内では既に定着し、それなりの効果を出している。来場者の目的は、自社が導入したシステムと他システムとの進歩を比較し、細部での機能を確認しているだけにも見えた。
弊社は、知財部門で残されていく「アナログ仕事」へのお手伝いと「知財教育」の基盤構築の提案をした。「地味コンセプト」であるが、興味有る方は熱心に聞いてくれた。弊社の提案は今後の「はつめいくん便り」でも紹介していくつもりだ。
ここでチョイト能書き。
ネット社会の最大の特長は、何か分からないことがあれば、ネットを通じて何らかの答えが得られることである。即ち「課題解決」に役立つ情報、あるいは答えを得ることは容易な社会である。
デジタル技術の進歩は、これまでの「アナログ仕事」の領域を減らし、仕事の効率を飛躍的に高めることに成功した。一方、答えを安易に求める思考は探索という創造の段階が軽視されるのではなかろうか。つまり創造力の領域が「どんどん」と狭くなり、自分の頭で考える機会が減っていくことに繋がるのでは(余計なお節介とお叱りを受けるかも)。
幾らデジタル技術が進化しようとも人間が判断すべき部分の仕事、即ち「アナログ仕事」は必ず残って行くと思う。残されていく「アナログ仕事」は、ますます複雑化され「深化」して行くはずだ。この「アナログ仕事」をIT技術(人口頭脳?)を使って実現できないか、という挑戦は今後も続くであろう。しかし様々な経験から得た人間の知力を超えることはそう簡単なことではないと思う。
更に能書きの続き
知財教育のコンセプトは、”知財は技術者のためにあるのです!会社が儲かる発明をしてください!知財部の為にあるのではありません、!技術者は知財を武器にしないと損をします!技術者は創造的な仕事をもっと楽しむべきです!”という切り口になるかと思う。
しかし教育は、施す側に矛盾があれば、受ける側を説得させることが難しい。例えば、日本人が大好きな戦略という言葉について考えてみる。会社経営に様々な戦略が必要だということは誰も否定しない。しかし各戦略は、会社によって異なり、具体的な答えが用意されている訳ではない。自分たちで考えるしかない。戦略とは極めて抽象的なものである。
例えば「知財戦略」を立てようとすれば「知財業務」から共通する事項を引き出し、それを自社の経営方針に合わせながら抽象度を高めていく創造の段階が必要である。つまり、自分の頭で考え、自社特有の答えを出していく「積み重ねと思考錯誤の作業」である。技術者たちに創造的であれ!の一方的な押し付けでは矛盾がある。まず知財部門が創造的、かつ論理的でなければ彼等を説得することは出来ない。(矢間伸次 2015/11/24)