特許庁の営業秘密保護に対する取り組み(1)
特許庁は2015年春から(独法)工業所有権情報・研修館(INPIT)を通じて試行取り組みを開始する。営業秘密情報とにタイムスタンプを押した資料(タイムスタンプト-クン)を保管するサービスである。隣の韓国では2010年から営業秘密原本証明サービスを開始し、急拡大中と聞く。日本特許庁がこのサービスを取り入れた背景は、特許制度だけの限界部分を補完するのが目的と思う。
社内には様々な知的財産が埋もれている。多くは個人の頭の中に記憶されたままである。特に「研究開発技術者」にその傾向が強い。彼らの研究成果は、特許を出願して顕在化させるのが手っ取り早い。しかし、何もかも特許出願して開示していたのでは、開示リスク伴う。これを「開示知財」という。一方、ノウハウ技術やプロセス技術等は「ブラックボックス技術」として特許出願せずに社内で秘匿しながら運用する知財である。これを「守秘知財」という。知財経営の狙いは「開示知財」と「守秘知財」の保護と活用で会社の利益に貢献することである。
日本企業はバブル崩壊後、苦難(円高、経費削減、社員のリストラ、新興国への進出、事業の撤退、合併再編など)を乗り越えながら低コスト体質を目指してきた。このところ世界の経済情勢は複雑(円安、株高、紛争、経済危機)となり、日本に大きなチャンスが巡ってきた。そのチャンスを齎しているのが日本技術への信頼である。日本の拘り技術や安全技術が世界から見直され、裾野の広い商談が舞い込んでいると聞く。コストに大差がないならば、日本の技術を導入したほうが良いに決まっている。
日本には世界が羨む、欲しがる技術やコンテンツが「ワンサ」とある。この知的財産が日本を支えていく資源となる。しかし、我々日本人は目に見えない無体財産である知的財産のマネジメント法は持たない。そのことが心配である。「開示知財」は特許明細書で明快に開示する。「守秘知財」は”ノウハウ明細書”の管理で秘匿する。(2015/05/21 矢間伸次)
*)関連として「知財幻想」をアップしています。読んでいただける方がいらしゃれば、こちらから
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