お陰様で多くの方から申し込みを頂きました。今回、都合により参加できなかった方は次回の参加をお待ちしています。当日は開催にあたり、IPMA事務局から当協会の使命、活動、運営などを紹介させて頂きました。
当協会の使命は、知的財産を会社経営に取り込む「知財経営」の啓蒙活動と人材の育成です。当協会の主な活動は、グローバル社会で活躍できる人材育成のお手伝いと,文書の品質管理を主とする「ISO知財モデル」の構築です。人材育成は「知財経営塾」で行います。「特許ライティングマニュアル」を作成し「パテントライターへ」の支援と「日・米・中」の特許辞書も構築して参ります。当協会は、賛助会員様の賛助金で運営されます。賛助会員様へのサービスはホームページで紹介しています。当協会へのご支援,ご協力協力を御願いします。
講演は3部構成としました。各講演の時間が短く、もっと聞きたかったという意見をたくさん頂きました。第一部は「知財経営の推進戦略」です。内容は法律や技術といった、知財活用に必要な様々な要素を体系化して知的財産をマネジメントする必要性を訴えました。第二部は「クレーム(請求項)の構造化」です。内容は特許明細書の中で最も難解なクレームを構造化することで明快なクレーム文が作れることを伝えました。第三部は「開示知財と守秘知財の活用戦略」です。内容は「開示知財」は隠さず明快に全てを開示する義務があり、「守秘知財」は「イザ有事」の時に証拠書類となる文書でなければビジネスの世界では役に立たないことを強く訴えました。また特許出願に頼らない「知財経営戦略」への転換も提唱しました。
さて当協会は、“このままで良いのか日本の「特許明細書」”の警鐘を鳴らしています。“このままで良いわけが無いだろう、早く改善をすべき!”という考えと“これで良いのだ余計なことは言うな!確かに昔の特許明細書は酷かったが、いまでは改善されている”という考えがあると思います。以下は、私個人の能書きです。
自分は、多くの特許明細書(*)がなぜ難解なのか、という素朴な疑問を持っております。自分が考えるには申請者側と審査官のやりとりにおいて申請者側の“特許を取りたい”という願望からくる「こじつけ」と、出願された特許明細書の文章だけで発明技術を理解し(?)特許要件を判断しなければならない審査官との“言葉のゲーム”になったのではないかと想定しています。(*)全ての特許明細書ではありません。技術分野や企業によって大きバラツキがあります。
やりとりに使われる言葉は、解釈範囲の広い曖昧な(阿吽の呼吸で、以心伝心を期待した)日本語です。この日本語を使って、お互いの妥協点を探りながらの「こじつけた文章」をこの数十年の間、積み重ねて来た結果です。つまり「日本特許村」独特の進化を遂げ、日本特許明細書がガラパコス化したと考えています。
この「こじつけ」の技が結果として、他言語ヘの翻訳が困難な言語となり“世界で通用しない(戦えない)特許明細書”となってしまったのではないでしょうか。この「こじつけ」の技は、日本の強みでしたがグローバル化で、足かせとなり、他言語への翻訳を通じて、伝わらない、訳せない日本語の存在が露見したということです。しかしこれは、誰の責任でもなく、それぞれの立場で一生懸命やってきた結果です。恐らく改善は難しいでしょう。
視点を変えれば、特許明細書は研究開発技術者たちが読むものです(読む必要性に迫られています)。彼等が「スイスイ」と読める特許明細書へ改善すべきと考えます。改善することは決してタブーでは無いはずです。改善が進まないのは”まわりがやっているから、これまでやってきたら、”と言う単純な理由です。日本の大企業は、恐らく変われないでしょう。しかし中小企業は変われるはずです。自分はそこに希望を持っています。また「こじつけ」で取得した特許が及ぼす悪影響は大きく、開発現場に混乱を起しています。“こんな当たり前の技術が特許では開発ができない!”ということになります。これは特許法の理念に反する“産業発展の妨げになる”のではないでしょうか?(2013/11/15 矢間伸次)