新規事業の商品開発は「戦略的特許調査」を行わないと失敗します
まず”戦略的特許調査とは何か、それがなぜ必要なのか”を開発技術者へ説明をし、了解を得ることが重要です。開発技術者の理解と協力が無ければ必ず失敗します。では「戦略的特許調査」とはどんなものかを簡単に説明します。
特許調査をスタートさせる前に自社の新商品開発においてポイントとなる要素技術を浮かび上がらせ、それらを「分析・整理」をし、その上に他社の技術(特許)と比較する手法です。この当たり前のことを忠実に実行するだけで特別な手法を施すわけではありません。具体的な要素技術は次のの3つです。①機能:その新商品、システムが目的とする機能は何か、②手段:その機能を実現する手段は何か、 ③構成要素:その手段を構成する構成要素は何か、
調査スタッフは、この③つのポイントを明確に浮かび上がらせるために開発技術者から技術内容を聞き出し、自分の頭で理解し、文書化し、議論を重ね、両者の「ベクトル合わせ」をする作業が重要です。新しいアイデア技術ですから調査スタッフには分らないことがたくさんあります。しかし理解できるまで、しつこく教えを被ることで解決していきます。
当初、開発技術者は調査スタッフの技術知識(背景)について懐疑的になるのは当然です。しかし調査スタッフに理解する能力があれば「オッ!この人は分ってくれる」ということで、やがて信頼を寄せてくれます。開発技術者にとって知財の安全を確保し、自分達が自由に開発できる技術領域を確保し、将来の仕様変更にも素早く対応ができます。しかも全対の流れから詳細に及ぶ「開発設計仕様書」が整理され、開発メンバーが共有することができます。
「戦略的特許調査」をA社で長くやらせてもらっていますが、調査スタッフを育てて頂いただけでなく新商品仕様が変更(Verアップ)されるたびに声を掛けてくれます。本当にありがたいことで感謝の気持ちで一杯です。この「戦略的特許調査」の遣り甲斐は、開発技術者さんからの感謝です。開発技術者が抱えるプレッシャーは大変なものです。”新商品の開発は他社特許の権利を侵害しないこと”、これが社命です。しかし開発スケジュール(END)は,キチンと決められています。開発技術者がみずから特許侵害調査を行うことがいかに大変なのか整理してみます。
①特許件数は年々積みあがり膨大な情報量になっています
②調査対象の技術領域が広がり分野の重なりがあり複雑な技術へと進化しています
③図面で「ゴミ落とし」できる特許は少なく、詳細まで読み込む必要のある特許が増えています
④特許公報に書かれている文章が難解で読み難く(紛らわしく)判断に苦しんでいます
⑤開発技術者にとって”こんな技術が特許であれば開発ができない”つまり当たり前、進歩性が小さい技術が「やたら」と特許になっています
⑥要するに新規事業の開発商品の特許侵害調査は膨大な時間がかかり開発が遅れます。だからといって新規事業部署の専属で、知財部署へ支援要請できる状況ではありません。
これが現場に置かれている開発技術者の現状です。会社は新規事業の開発商品で会社利益を考えているわけですから
特許侵害調査にはそれ相当のお金と人を掛けて開発技術者の負担を軽くすべきと思います。人の手当てができないからと言って、場あたり的に特許調査を進めていたのでは幾らお金があっても足りません。(2013/10/10矢間伸次)