日本では実用新案制の役割は小さいと考えられています。本来、実用新案で出願すべきに考案技術であっても無理やりに特許として出願する傾向があります。中国は実用新案の出願が圧倒的に多いです。多くが中国籍企業(中国・香港・マカオ)と台湾籍企業からの出願です。中国実用新案制度は外圧を受けずに中国独自での運営がされてきました。これは中国企業にとって大変使い勝手の良い制度と言えます。
「知的財産権制度」は、基本的に世界共通のルールで運営されます。しかし各国の経営方針(国の事情)によって異なる部分があって当然です。そのひとつが実用新案制度の運営にも現れています。”日本も中国も同じである”という考えでは対処の判断を間違えます。中国企業における実用新案の使われ方を研究しておく必要があります。中国でビジネスをするには「郷に入れば郷に従え」という考えが必要です。
中国企業は実際に「物づくり」をしていますので考案や発明が生まれやすいです。しかも、中国は多民族の集まりで広い国土を持っています。そこには多様なニーズを生み出す経済格差もあります。また世界中に商圏を持っており、そこからも様々なニーズが生まれます。多様なニーズは多様な技術を生み出します。その技術の多くは市場に出回っている商品の改良や応用技術です。
ご承知のように中国実用新案は、方式審査(書式審査)だけで実態審査はなく実用新案権が与えられるます。.「売れ筋商品」をリバースして中国や新興国向けの製品に仕立てるビジネスモデルですから、権利期間、10年もあれば充分です。中国企業は実用新案権を獲得したら、すぐに権利の主張をしてきます。日本企業も中国企業から訴訟されるケースが増えます。中国の実用新案権を無効にすることは困難です。なぜなら進歩性は小さく権利の主張は「平たく、広く」具体性に欠けています。特許のように構成要件ごとに分解して無効資料と比較する作業は困難です。中国特許庁は権利者の保護を優先しています。無効申し立ての審査は、できれば少なくしたいというのが本音です。”若し、どうしても”ということであれば、無効にする為の提出資料は「ピッタシ」の一文献を要求します。
日本企業がやれることは自社商品に使われる改良、応用技術が中国の実用新案に抵触しないか!という立場での対応です。中国政府は知財立国を目指しており知的財産の出願促進キャンペーンを展開しています。膨大の件数ですから危険な弾に当たる可能性は高いです。中国企業は早く製品を市場に出して販売実績を作り会社を大きくする必要があります。そのためにも多くの知財を出願します。なぜなら、大会社に成長すれば、その地方の優良企業となり知財係争にも強くなれるからです。
日本企業は中国実用新案の出願とウオッチングが重要となります。中国実用新案は中国商標と同じで「早い者勝ち!」の状態です。中国実用新案を「安く、早く、品質よく」出願するには、中国弁理士と打ち合わせをし、ダイレクトに中国実用新案明細書を作成することです。この方式が日本国内で採れるのは「中国知的財産サービスセンター」のサービスだけです。中国実用新案のことで様々な悩みをお持ちの会社は遠慮なく相談してください。(2013-09-11矢間伸次)
http://www.cn-wang.jp