2001.9.11以降、USA国家機構がなりふりかまわずのやりたい放題、ハチャメチャ路線に転換したのは良く知られているところだが、この路線はUSAだけでなく欧州(EU)も、その程度は軽度だが、追随してきており、もちろん、この日本列島の国家機構も、USAの属州であるから当然、親方のご指導のとおりにまねしてきている。
その度合いも段々に規模の大きいものとなり、ついには今回の「アベノミクス」なる経済政策にまで行き着いた。その目玉は金融の「量的緩和」らしいが(あまりまじめにニューズを追いかけていないのでもしかしたら間違っているかもしれない)、「量的緩和」というなんとなくわかったようなわからないような言葉を具体的に解説すれば、お札を刷って市場にばら撒く、ということである。その出回ったお金で賭場市場(株やら国債他の債権や為替)を景気良くし、その勢いで物の売った買ったを増やして経済を少なくとも2%ほどは「成長」させようというものである。
誰が考え出した政策かは知らないけれど、海外、特にUSAの政府を通しての金融筋からの強い要望に答えたものであることは明らかであろう。何しろ欧州は停滞したままであるから、日本の賭場が活気付いてくれないと彼ら西洋ばくち打ちは困るのだ。東京の株式市場はもう随分前から半分以上は外人さんの商いという”グローバル賭場”であり、円とドルを売ったり買ったりして毎日を過ごしている人の大半もプロ賭博師のガイジンさんである。
賭場(Casino)というのはプロのばくち打ちだけで”丁だ半だ”とやっていても面白くもおかしくもない、つまりプロ同士で取り合いしていても稼ぎにならないわけで、大金を懐に入れて参上してくれる大旦那がいて初めて成り立つ。しかし、豊かな大旦那の数も減り、しかも今までに大損こいたりして痛い目にあっている旦那衆も多いため、「新装開店」と看板を上げても「疑心暗鬼」の目で見られる。そのために、国としてまず真っ先に財布の紐を緩めてお金の廻りをよくして、賭場に呼び込む手はずとなる。
なんせプロが仕切っている賭場であるから、案の定、株式はジェットコースターのような乱高下相場となるし、為替はあっというまに20円も円安になったりする。いずれも、実際の経済とは何の関係もない動きであり、日経新聞を先頭にしてマスメディアがもっともらしく、ああでもないこうでもないと報道していること自体が滑稽である。清水の次郎長や大前田英五郎親分の賭場の様子を実況放送しているようなものだ。バラエティ番組にふさわしい対象である。
さて、量的緩和、つまりお札を刷るやり方であるが、日銀が自分でお札と国の債券の両方を刷る「赤字国債」はご法度とされている。言うまでも無く、とんでもないインフレを招くことになるから。それならばどうするか。死ぬほど国債を抱えている民間金融機関(銀行とか生保)から、刷ったお金で国債を買い上げるという手を使う。これで銀行は手許に動かせる現金が増える。それでは製造やらサービスを業としている株式会社は待ってましたと借りてくれるだろうか。
大阪のねえちゃん・おばちゃん風のイケイケ経済でバブルの時に大やけどした記憶がまだ消えていないし、国とちがって会社の経営者はもう少しはまじめに世の中を眺めているから、堅実経営を続けている。無借金経営が増えているのはその一つの証拠である。つまり、借り手はそうそう出てこない。では、そのお金はどこへ。新たな国債の購入にあてられる。
この国の年間の経営資金は毎年100兆円である。税金ではその半分しかまかなえない、つまり毎年50兆円借金して経営している。これを20年続けてきたから、借金の残高は1000兆円という宇宙天文学的、世界で一番の借金大国となっている。こうなると、ポイントオブノーリターン、つまり首くくるしかもう手はない事態がそこまで来ている。具体的に言えば、新規国債発行額がイコール発行済み国債の満期返済に全額当てるしかない事態に近づく。100兆円国債を刷っても手許にわずかしか残らない事態、「完全グリコ」である。日銀に発行済み債券を買ってもらうしか手は無いことになる。
以上のことから、金融の「量的緩和」はまず賭場経済を活性化して海外のゴッドファーザーのご機嫌をとるためであり、次に、国債を買って市場の通貨の量を増やす、の二つの意味を持つことがわかる。その結果はどうだろうか。下世話に言えば、立たないのにバイアグラ(Viagra)飲んで無理やり”奮い立たせる”ようなものだから、やけくその処方箋である。飲みすぎて心臓麻痺あるいは全身機能不全を起すことにもなりかねない。いや、多分、そういうことになるだろう。
東海や南海トラフによる大地震の前に、経済トラフがガタンとずれての大地震がくるかもしれない。自分の身は自分で守るしかない時代に来ている。年金も「運用」の名の下にますます大規模に賭場につぎ込むそうだから、もうあてにしてはいけない。その金はプロの賭博師に全額もって行かれるの運命にある。私が言えるのは一言だけ:心身を鍛えよ。
(13.06.05.篠原泰正)