日本の特許庁に出願される特許明細書の多くにおいて、”先行技術の参照が不備である”、と特許庁が問題視しているらしい。そのために審査に手間取り、結果として、膨大な審査待ちの滞貨の原因の一つとなっているそうだ。
そりゃそうだろう。
一読しただけではとても意味がつかめない不可思議な日本語で記述されている特許明細書の山を前にしては、いかにまじめな技術者と言えども、調査はほどほどにして出願用の原稿を知的財産部に渡すことになろう。自分達の発明に関係しているのかどうか、頭を抱えながら他社の特許や公開の出願明細書を読んでいては日が暮れてしまうだろう。それこそ、自分達の研究開発に従事している時間が無くなってしまう。
現行の奇妙な特許明細書の記述が続く限り、提出される特許出願の書類において、先行技術の調査は不備のままであろう。改善される余地はない。
膨大な未審査の山を抱えている特許庁は、自分で自分の首を絞めていることになる。
この問題を解決するのは簡単な話で、何が書いてあるのか、当り前の頭脳を持った人にとって理解できなければ、その出願書を突き返せばいいだけである。分かりやすく明確に記述されている特許明細書を提出するのが当り前となれば、少なくともその時点から先の公開文書を調査するのは大いに楽になるだろう。そうなれば、技術者も調査を丁寧におこない、関連する技術は参照としてキチンと記載するだろう。
マヤ文明の碑文字のごとき解読不可の文書をゴマンと積み上げて「知的財産立国」を目指すというのは、ドタバタ喜劇もいいところではないか。特許庁ではなく、民営化を図って「吉本興業」に業務を移管したらいかがなものだろうか。
なぜこのような不思議なことが何十年にも渡って行われて来ているのか、私にはまったく理解の外の出来事である。
05.11.26 篠原泰正)