アジア企業の商品開発コンセプト
ー技術開発は勝てる、しかし事業開発は負ける。その理由はー
商品開発コンセプトについて、「4ツ」の領域を想定してみる。
★ 1の領域:、市場ニーズは既存、実現シーズは容易
この領域は、既存商品があるMe-Tooの研究開発である。多くの日本企業が取り入れている商品開発コンセプトである。参入者が多いため競争激化となり低価格化へと進んでいく。市場ニーズは日本人向けとなり「オタク商品」へ陥りやすくなる。
★、2の領域:、市場ニーズは既存、実現シーズは困難
この領域は、長期テーマで大量の資源(膨大な開発費)が必要である。多くの技術者がやりたがる商品開発コンセプトである(*-1)。無いものねだりの可能性がある。アジア企業は、この商品開発コンセプトは採り入れない、(*-2)。日本企業にお任せしているとも考えられる。
(*-1)研究開発とは、なにやら難しいことに挑戦することで、それが技術者の使命であるという思い込み。(*-2)中国では大学、公共研究機関が金の掛かる部分を引き受けている
★、3の領域:、市場ニーズは未存、実現シーズは困難
この領域は、全てにおいて判断材料が乏しく、やって見なければわからない研究開発である。リスクが大きい。
★、4の領域:市場ニーズは未存、実現シーズは容易
この領域は、未存ニーズを見つけた時は極めて美味しい研究開発である。この領域こそアジア企業が目指す開発コンセプトである。膨大な開発費を掛けずに商品開発ができて売り上げも利益も独占できる、こんな美味しい領域に手を出さない(出せない)日本企業は技術開発に勝っても事業では負ける。アジア企業は人が気がつかない易しい課題を生み出すための調査研究(*)に力を入れている。
つまり課題を解決する研究開発(実験研究)は、日本企業に任せ自分たちは、課題を生み出す研究開発に徹底していくというスタンスである。新興国には多種多様の二ーズがあり、ニーズの掘り起こしはアジア企業にとって容易である。日本企業の開発コンセプトはアップサイジング型で、僅かの差別技術を生み出すのに血眼になっている。アジア企業の開発コンセプトはダウンサイジング型で機能の取り外し等の、単純化でコストダウンを実現させている。
例えば空調機にマイナスイオン、(?)プラズマイオン(?)こんなものは不要、ボタンの数が多いリモコンも不要、分厚いママニュアルも読まない、その地域の環境に耐えられるタフな商品であればよい等。インフラ整備が不十分で所得の少ない新興国からのニーズは必ずしもアップサイジングとは限らない。(*)既存の情報、特に特許情報を引き回す
【中国のものつくりの特徴】
いま市場に出回っている商品は、7~8年まえの発明技術が主に使われている。日本企業にとっては成熟を迎えた技術であまり関心が無いかも(?)。衰退技術、それとも枯れた技術(?)、あるいはローテク(?)。しかし中国で最も関心があるのは、この枯れた技術、つまり「当たり前の技術」である。この枯れた技術が中国企業にとって邪魔になることがある。実は日本企業が持つ中国特許が危ないのである。中国企業から特許権の侵害を受けることもあるが、最近では無効審判で特許無効にされる、という逆のケースも出てきている。日本からの中国出願明細書は不備であるため、中国企業から無効審判を申し立てられると、本当にヤバイ!ことになる。
市場に出す商品は品質が第一である。安全と品質第一は日本企業もアジア企業も同じである。アジア企業は、この品質を維持するために、要となる部材、部品は日本製を組み込んでいる。品質にさしたる影響のない部分は自分達で安くで作る。いまでは自分達で何でも作れる技術とインフラはできているが、このように品質には十分な配慮がされている。新興国における知的財産戦略の拙さが日本の重要な部材と部品が買い叩かれている。(矢間伸次)