AIと特許翻訳
特許業界にとってグーグル翻訳の「超進化」は脅威、あるいは歓迎と、受け取り方は様々のようです。特許明細書は技術発明を言語で記述するものですから完成度が一定の水準に達している言語であれば、何語で書いても、基本的には同じことを記述できるはずです(そういう記述が望まれます) 。技術の説明には「文明言語(*)」が使われるはずです。文 明言語とは文化の色合いを出来るだけ排除した文明としての普遍事項を表現するためのオープンな言語です。
英語は技術の説明に適した言語であると言われています。したがって、オープンな英語で書かれた米国特許明細書であれば日本語ヘの翻訳はかなり精度が高いです。条件(英語型に近い日本語)が合えば、その逆の流れも可能です。しかし問題は、世界共通語である英語との互換性が難しいのが日本語です。日本人は世界へ「物、事、考え」伝えるための日本語を今こそ用意する必要があります。それは、『日⇔英』の翻訳ソフト(AI)が使えるオープンな「文明言語」で書かれた分かりやすい平明日本語を意味します。
日→英翻訳ソフトで70~80%の翻訳品質が得られれば翻訳作業の生産性は飛躍的に上がります。翻訳者は、自分の知識と経験を吹き込んで100%の翻訳品質を目指せますので遣り甲斐もでます。能力の高い翻訳者であれば、AIを使いこなしながら効率よく質の高い翻訳をします。彼等の手によって翻訳された英文特許明細書(案)を「基準明細書」とし、諸外国へ出願します。この「基準明細書」は、社内の「知財文書品質管理体制」を築くだけではなく、劇的なコストダウンも実現できます。
・知財文書の品質を高め、知財コストを劇的に削減する方法
https://www.ipma-japan.org/files/contents037-01.pdf世界の英文情報を収集し、その「要否(ノイズ落とし)」の判断をする為の目的であれば翻訳ソフトだけで十分です。因みに英語文章が長文であれば文節毎に分割して翻訳ソフトにかければ、翻訳品質は更に向上します。侵害や裁判資料等の精査が目的であれば「AI翻訳文」を腕の良い翻訳者に精査を御願いするのが最善の方法です。やはり残る問題は、日本語から外国語への翻訳です。翻訳ソフトを使って「日→英」の翻訳品質を高めるには、文書構成が論理的に展開され、文章が論理的に記述されてていることです。決して難しいことではありません。とにかく慣れることです。次回は「AIと共存できる知財人材」です。(発明くん 2018/02/07)
(*)文明とは、物を観る方法、考える方法、原理、技術、社会の仕組み、法制、システムなどを、文化と民族は異なっても、頭で理解することができる人には伝わるものである、と定義すれば、それらを表現し理解するための言語を「文明言語」と言えます。英語が論理表現に適している言語であるとすれば、日本語は詩歌の表現に適した、極めて叙情的な言語と言えるかもしれません 。その曖昧さ と余情が、色彩と造形の世界とあいまって、日本の美を作り上げてきたことは確かです。