以前から、特許出願は、“質か量か”の議論はされてきました。しかしいまだにその答えは見出せていません。それは特許の「質」についての議論が不足しているからです。特許の「質」は企業の業種や事業形態事そして事業戦略によって考え方が違います。企業で、実際に知財業務を携っている方からの意見が問題を解くに一番の近道と考えます。その前に、この問題を解くキーワードを自分なりに整理してみました。
★キーワード1は「知財のグロ-バル化」です。嫌でも仕方がありません。日本企業同士が国内で、あるいは国外でゴチャゴチャやっている場合ではありません。今後は海外企業との戦いになります。企業と企業が、あるいは産業と産業、国と国の戦いにも繋がっていきます。ここでは「量」より「質」だと思います。
★キーワード2は、日本の人口の縮小(少子化、高齢化、)です。日本国内では市場の拡大が見込めません。更に日本は均一社会(国土が狭く単民族)であり新しい多様なニーズを生み出せない状況にあります。この状況で日本企業が持続的発展を遂げながら生き抜くには新しい市場を求めての海外進出が避けられません。国内の特許出願件数は減らしても海外への特許出願件数は増えると思います。やはり「量」よりも「質」だと思います。
★キーワード3は、日本国への特許出願件数が減少傾向にある事実です。この流れは止まらないでしょう。なぜなら企業は経費削減を強いられ、限られた予算の中で外国への出願もせねばなりません。これからは市場のある国、ビジネスが生まれる国へ特許が出願されるのは当然です。日本は事業の再編,企業の合併、関連会社の統合などで会社の数が減っていきます。外国企業も日本国へ特許出願するメリットを見出せなくなっています。果たして日本国へ特許出願する理由、目的は何でしょうか?
★キーワード4は、「質」を維持するのに「量」が必要という考えです。「黎明期・成長期」においては「出願ノルマ」が次から次へと新製品を生み出す原動力になったことは間違いありません。しかし、一方では無駄な特許出願へつながったと考えています。いま日本は「成熟期・衰退期」を迎えています。「出願ノルマ」を課す、というこれまでの考え方は「質」よりも「量」を重視した結果だと思います。
★キーワード5は、発明技術の目利きはできるのでしょうか、という疑問です。発明提案書の数を増やし、特許出願件数を減らし、出願しない発明技術は守秘技術として管理する。日本企業は、このような知的財産のマネジメントができるのでしょか。(矢間伸次 2013/12/05)